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火星の運河
- Narrated by: 西村 健志
- Length: 18 mins
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Publisher's Summary
<内容紹介>
又あすこへ来たなという、寒い様な魅力が私をおののかせた。
私は果てのない森の中を歩き続けていた。音も匂いも触覚さえもが私の身体から蒸発してしまっている。
全てが死滅してしまったかのような世界の中で、私はえも言われぬ恐怖を覚える。
一体何年の間、或いは何十年の間、私はそこを歩き続けているのだろうか?歩き始めたのは昨日であったか、或いは何十年も前だったか?……それさえ曖昧だった。
ふと気が付くと私の周囲に薄明かりが漂い始めていた。目の前の森にようやく切れ間が見えた。
「出口だ!」
そう思った私であったが、そこが出口ではなく森の真ん中だったのだと気付く。沼の岸に立った時、華やかな色彩がある訳でなく、単調な色どりを映しているに過ぎないはずなのに、「私」はその景色のあまりの美しさに眩暈を覚えていた……
<江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)>
日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。
又あすこへ来たなという、寒い様な魅力が私をおののかせた。
私は果てのない森の中を歩き続けていた。音も匂いも触覚さえもが私の身体から蒸発してしまっている。
全てが死滅してしまったかのような世界の中で、私はえも言われぬ恐怖を覚える。
一体何年の間、或いは何十年の間、私はそこを歩き続けているのだろうか?歩き始めたのは昨日であったか、或いは何十年も前だったか?……それさえ曖昧だった。
ふと気が付くと私の周囲に薄明かりが漂い始めていた。目の前の森にようやく切れ間が見えた。
「出口だ!」
そう思った私であったが、そこが出口ではなく森の真ん中だったのだと気付く。沼の岸に立った時、華やかな色彩がある訳でなく、単調な色どりを映しているに過ぎないはずなのに、「私」はその景色のあまりの美しさに眩暈を覚えていた……
<江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)>
日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。
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